画家、絵本作家、装丁家など幅広い活動で知られる安野光雅の作品を紹介する特別展「安野光雅 空想と風景 絵本原画の魅力」(四国新聞社共催)が12日、高松市紺屋町の市美術館で開幕する。機知に富んだ不思議な絵本や緻密に描かれた風景画など、デビュー作から近作まで約130点の原画を展示。半世紀にわたって制作を続ける安野の多彩な世界に触れることができる。12月22日まで。


「さかさま」1969年 Ⓒ空想工房


 安野は1926年島根県生まれ。68年に絵本「ふしぎなえ」でデビューし、国際アンデルセン賞をはじめ、菊池寛賞など国内外で多くの受賞歴がある。科学や数学、文学にも造詣が深く、豊かな知識による謎掛けを盛り込んだ絵本で知られ、親しみやすくノスタルジーを感じされる絵画も手掛けている。


「旅の絵本Ⅱ」2006年 Ⓒ空想工房


 本展では子ども向け絵本だけでなく、安野が戦時中に陸軍船舶兵として赴任した王越村(現在の坂出市王越町)、島根県や岡山県といった中四国の風景を描いた水彩画も並ぶ。


「ふしぎなえ」1968年 Ⓒ空想工房


 デビュー作「ふしぎなえ」の原画の一つは、迷路を目で追っていくといつの間にか天地が逆になる「だまし絵」。階段を上ったり壁をよじ登ったりと、さまざまな行動をとる人が逆さまに描かれ、不思議な世界に引き込まれる。「旅の絵本II」(2006年)にあるイタリアの町の絵は、一見するとのどかな風景画だが、細部に目を向けると農作業などをする人々の日常生活が緻密に描き込まれている。

 担当学芸員は「印刷では再現できない原画の良さを味わってほしい。親子で鑑賞する際は、子どもが絵の仕掛けに気付くまで考えてもらって」と話している。

 高松市美術館主催。入場料は一般千円ほか。高校生以下無料。問い合わせは高松市美術館、電話087-823-1711。

(四国新聞・2019/11/08掲載)

「安野光雅 空想と風景 絵本原画の魅力」


所在地 香川県高松市紺屋町10-4 高松市美術館
開館時間 9:30~19:00(但し日曜日は17:00閉館/入室は閉館30分前まで)
休館日 月曜日
TEL 087-823-1711


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