林求馬邸(多度津町)幕末の面影とどめる家老屋敷 藩主用だった大玄関 北斎の絵も収蔵
多度津町役場から車で約15分。多度津町奥白方のブドウ畑が広がるのどかな風景の中に、しっくいの壁が連なる1軒の大きな屋敷がある。「林求馬(もとめ)邸」は1867(慶応3)年、外国船からの攻撃があったときに多度津藩主の避難所にするため、家老だった林求馬が造った屋敷だ。
屋敷は、上級藩士の武家屋敷の様子を残す貴重な建物として、町の文化財に指定されている。建物は町が所有し、多度津文化財保存会や近隣住民の手によって守られている。
白壁が連なる門をくぐって屋敷の中に入り、かつてはお殿様しか通れなかった大玄関をくぐる。入り口には岡本秋暉(しゅうき)が孔雀(くじゃく)と牡丹(ぼたん)を描いたついたてが出迎えてくれる。孔雀は立派な尾を持ち、背景の金色と相まって優雅で上品な雰囲気だ。
この屋敷には、林家が収集した多くの文化財や美術品が残されている。多度津藩主から拝領したという備前焼の獅子のほか、儒学者の書のコレクションも。中には、大塩平八郎が大塩平八郎の乱の前日にしたためたとされる書もある。びょうぶの中には葛飾北斎の肉筆の絵もあり、当時多度津がいかに栄えていたかが想像できる。
大きなソテツやサザンカなどが美しい、立派な庭も必見。周囲はとても静かなので、ほっと心落ち着く空間だ。
また、林求馬の前の家老である直記は若くして隠居し、良斎と名を改めて陽明学者として活躍した。1846(弘化3)年には多度津に私塾を開き、藩士や一般子弟の教育に力を入れた。邸内にはこの私塾の建物を新築復元しており、まさに「寺子屋」のような雰囲気。良斎は陣屋建設の総指揮を執った人物でもある。
一般公開は毎月第1日曜日と毎年5月4日。茶会や講演会などが開かれることもある。問い合わせは多度津文化財保存会事務局のレストラン「赤いはりねずみ」、電話0877-33-3884。
(四国新聞・2019/11/12掲載)
林求馬邸の公開
所在地 | 香川県仲多度津郡多度津町大字奥白方698 |
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営業日時 | 毎月第1日曜日の9:00~15:00、5月4日 |