夜の直島パヴィリオン(直島町)暗闇に白く光る“28番目”の島 もう一つの島の象徴 冬の特別感を演出
直島発高松行きの高速艇の最終便は、午後7時45分に出発する。この季節になると、最終便が出るころにはあたりはすっかり真っ暗闇。島の玄関口である宮浦港に設置された建築家藤本壮介さんの作品「直島パヴィリオン」がライトアップされ、暗闇に白く浮かんだ姿が幻想的だ。高速艇が出発するまでの短い時間を惜しみながら、作品を鑑賞した。
直島パヴィリオンは直島町の町制施行60周年を記念し、瀬戸内国際芸術祭2016の新作として2015年に完成。ステンレス製の三角形の金網約250枚を組んだ多面体で、縦・横とも約7・5メートル、高さ約6・3メートル。宮浦港といえば何といっても草間弥生さんの「赤かぼちゃ」が有名だが、もう一つの港のシンボルといえるだろう。
直島を含む直島諸島には27の島があり、28番目の島を表現したという。見る角度によって形を変えるその姿は、まさに瀬戸内の島々のよう。
作品の内部に入ることができる。内部にも起伏があり、子どもたちが入って中を歩き回ったり、金網のすき間から港の様子を撮影したり。混雑していなければ、中で寝そべって空を見上げるのもよさそうだ。
昼間は爽やかな青空に白いフェンスが映えるが、夜になれば雰囲気は一変する。暗闇の中に白く光る島がぼんやりと浮かび、幻想的なムードに包まれる。海外からの観光客の姿も多く、海辺に座って語らう恋人たちもいる。きっと今夜は直島に宿泊するのだろう。
撮影に夢中になっている間に、出航時間が迫ってきた。同じように足早に写真を撮って、港へ急ぐ人も多い。
日帰りで直島と高松を行き来することの多い県民は、夏場は明るいうちに島を後にしてしまうことが多い。だからこそ暗闇に包まれた直島は特別感がある。日没の早い冬はさみしくもあるが、直島の貴重な「夜の顔」を見られる楽しみもある。
(四国新聞・2019/12/10掲載)