高松市牟礼町の四国霊場85番札所・八栗寺(新見竜玄住職)は、八栗寺に祭る讃岐三大天狗(てんぐ)の一狗「中将坊」を描いた図絵を復元模写した。牟礼町内の住民から寄せられ、もともと傷んでいた図絵を基に新たに制作し、鮮やかによみがえった。八栗寺は「これまで寺には中将坊を描いた絵はなく、信仰の広がりを知る上でも貴重な資料になる」としている。正月三が日に一般公開する。


元日から公開する「五剣山天狗マンダラ図絵」


 図絵は明治初期の作で、縦約50センチ、横約95センチ。掛け軸に仕立てられている。2年前に牟礼町原地区の住民から帳面などと共に寺に持ち込まれたもので、太陽と月が昇る五剣山を背景に、剣を持ち、靴を履いた中将坊とその周りを囲むカラス天狗が描かれている。


明治初期に描かれた図絵


 帳面に記された記録などによると、牟礼町原地区の住民十数人で「歓喜聖天講」という信仰の集まりが組織され、1882(明治15)年ごろから持ち回りで掛け軸などを回し、手を合わせていた。近年は住民4人で行われていたものの、高齢化や後継者の不在などの理由で活動の継続が難しくなり、八栗寺に預かりを求めたという。

 八栗寺は、経年劣化により多数の欠落がある図絵を保存しようと、修理を実施。さらに、描かれた当初の状態の再現を目指して、日本画の稲木伸行さん(69)=東京都=に復元模写を依頼し、今年11月末に新しい図絵が出来上がった。稲木さんは「力量のある絵師によって丁寧に描かれた作品。同じような雰囲気に仕上がるよう、線の鋭さや点による細かな描写などの再現に努めた」と話している。

 八栗寺は新しい図絵を「五剣山天狗マンダラ図絵」と命名。28日に開眼法要を行い、元日から3日間、中将坊堂で公開する。時間は9:00ごろから18:00ごろまで。

(四国新聞・2019/12/19掲載)

四国霊場85番札所・八栗寺


所在地 香川県高松市牟礼町牟礼3416
公開時間 9:00~18:00


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