明治から昭和初期にかけて、多度津町の発展に尽くした7人の豪商「多度津七福神」の1人、合田房太郎(1861~1937年)の邸宅「合田邸」(同町)。大正ロマンの香り漂う豪華な家には、きらびやかなシャンデリアやステンドグラスが飾られ、乙女心をくすぐられる。


開放感たっぷりの大広間。シャンデリアや格天井などの意匠にも注目してみて

 七福神は幕末から廻船(かいせん)業などで得た富を電力や銀行事業などに投じた7人。合田邸は七福神の中で唯一現存する邸宅で、大正末期から1928(昭和3)年にかけて建てられ、敷地内には13棟の建物がある。現在、魅力を多くの人に知ってもらおうと地元有志らでつくる「合田邸ファンクラブ」(泉川昌弘代表)がガイドや清掃などを行っている。

 広さにひときわ目を見張るのは、30畳もある大広間。詩人北原白秋が訪れ、その広さに「楽々荘」と名付けたという逸話もある。天井は折上格天井(ごうてんじょう)で、部屋を照らすシャンデリアには合田家の家紋であるカタバミがあしらわれている。

 この日案内してくれた近くに住む関口一幸さん(78)は、ここが一番のお気に入りなのだとか。「開放感がすごいでしょう。私も掃除に来たら、しばらく座ってのんびりするんですよ」。窓を開け放った大広間には、涼しい風が流れていた。

 表の通りからも見える応接間のステンドグラスや、食堂にある独特の模様のステンドグラスにも注目してみてほしい。タイルを貼ったモダンなトイレの手洗い器は、噴水のように水がわき出てくるから驚く。細かな意匠もぬかりがない。


食堂のステンドグラスは丸や線を使っていて個性的な図柄=いずれも多度津町、合田邸


噴水のように水が出てくる手洗い器

 このほど、合田邸など町内の文化財12点が日本遺産の「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間」に追加認定された。北前船の寄港地としてにぎわった多度津の町。往時の多度津を今に伝える合田邸は今、住民たちによって守られている。その奮闘する姿にも心を打たれるはずだ。

 邸宅は1人からでも見学を受け付けている。建物などを維持管理する協力金として100円が必要。問い合わせは泉川さん〈090(7785)7573〉。

(四国新聞・2019/07/09掲載)

合田邸


所在地 香川県仲多度郡多度津町本通1-5
TEL 090-7785-7573


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