香川県高松市の天神前交差点を南から北に進むと、真っ正面から中野天満神社(香川県高松市番町)と向き合うことになる。学問の神様菅原道真を祭った中野天満神社は、近代的なコンクリート造りの社殿を持つ。左手の背後には香川県庁本館がそびえ立ち、街中のビル群に溶け込んでいるように見えるが、実は長い歴史を持つ由緒ある神社だ。


伝統的な神社建築の様式を模しているように見えるが、コンクリートが独特の質感を生み出している=高松市番町、中野天満神社

伝統的な神社建築の様式を模しているように見えるが、コンクリートが独特の質感を生み出している=高松市番町、中野天満神社


 中野天満神社の創建は不明。かつては「中ノ村天神」と称し、香川郡中ノ村(現在の高松市中野町)にあったが、現在の場所に遷座された。神社の中には藩校も作られ、藩学振興の拠点ともなった。

 しかし1945(昭和20)年、高松空襲によって神社は全焼。それから24年もの月日を経て、69(昭和44)年に再建された。難を逃れた灯籠やこま犬、鳥居は今も境内に残る。

 コンクリート造りの神社は当時としても、今でも珍しい。宮司の柳原春正さん(45)は「最新鋭の建物にしたのは、二度と燃えてほしくないという思いからだったのでは」と推察する。神社は地域にとって、心のよりどころ。柳原さんは、中野天満神社の創建は石清尾八幡宮(高松市宮脇町)よりも古いと考えているといい、「中野天満神社はもともと地域の氏神様だったんですよ」と話す。


背後には香川県庁がそびえ立つ=高松市番町、中野天満神社

背後には香川県庁がそびえ立つ=高松市番町、中野天満神社


 1階は駐車場と書道用品店、2階は会館、最上階に拝殿と本殿が入る。1階は建設当初から駐車場だったというから驚きだ。

 建物は伝統的な神社の様式を模しているように見えるものの、コンクリートという異色の素材で木造の神社とは違った雰囲気を醸し出している。会館や拝殿への階段にも土はないが、2階部分には梅や桜の木も植えられている。境内には藩校の創設者である後藤芝山を祭った神社もある。


境内には藩校の創設者である後藤芝山を祭った神社もある=高松市番町、中野天満神社

境内には藩校の創設者である後藤芝山を祭った神社もある=高松市番町、中野天満神社


 年が明ければ、受験シーズンが本格化する。1月11日には合格祈願などの祈祷(きとう)やお火たきなどが行われる学神祭も開かれる。

 問い合わせは中野天満神社、電話087-831-3009。

(四国新聞・2019/12/24掲載)

中野天満神社


所在地 香川県高松市番町5-1-18
TEL 087-831-3009


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